会長挨拶
ご挨拶が遅くなりましたが、2021年10月のオンライン総会において、明治大学名誉教授倉田武夫先生の後任として私化連の会長に推挙されました長瀬と申します。私は(財)相模中央化学研究所での17年の勤務を経て2000年4月から東海大学工学部応用化学科に努めておりましたが、2019年3月に退職し現在に至っております。東海大学に移ってからこの私化連の活動を知る機会を得まして、時々参加させていただき他大学の化学系の先生方との交流を大変有意義に感じておりました。今後ともどうぞよろしくお願い致します。
私化連は、1974年に学会とは異なる目的をもつ教員間の情報交換の場として誕生し、当時は大学紛争の後を受け、実験助手問題など日常的な化学系学科内の課題を話し合うことが多かったと聞いています。その後歴史を積み重ね、2014年には40周年事業として「私化連40周年記念誌」を刊行しています。この記念誌は毎年当番校間で持ちまわる私化連資料の一つとして開催を担当する当番学科にて何部か保管してありますので、ご興味がありましたら是非ご一読ください。私化連発足時の話題やこれまでのアンケート結果結果のまとめなどが記載されており、私化連の歴史とこれまでの活動状況をご理解いただけると存じます。
とはいえ、私化連には毎年の総会に続くシンポジウムの議事録を残さないという方針がございまして(総会・幹事会議事録は残しています)、各学科の問題点や逆にアピールポイントなどを忌憚なく話し合う場としてとても有意義な会になっていると思います。また現在、私化連は成長期にありまして、初心を忘れることなく、かつ新しい風を取り込んで今後も大きく飛躍していきたいと考えております。そのためには、ベテランの先生方はもちろんのこと、大きな希望をもって大学の職務を始められた若い先生方のエネルギーも必要不可欠であります。どうぞ皆様、私化連を身近な存在としてとらえていただき、これからも多大なご支援を頂きたくお願い申し上げます。
2020年度からの3年間はコロナ禍のためほとんど活動が停止しておりましたが、2021年秋に日本大学生産工学部応用分子化学科の先生方によるご尽力のお陰で、オンラインによる総会と「オンライン授業の良い点・困った点」をテーマとしたシンポジウムを開催しました。お話を聞いてみると各学科それぞれにコロナ禍での授業対応の利点・欠点が抽出され、お互いにとても有意義な議論ができたものと思っております。
2023年度からは再び対面での開催を予定しております。今秋には早稲田大学先進理工学部化学・生命化学科のご協力により、対面での総会・講演会を開催し、もし可能であれば懇親会も開く予定で検討中と伺っております。また、その次の2024度は、工学院大学先進工学部応用化学科にて当番校をお引き受けていただけることとなりました。
これからもこの私化連当番校のバトンを繋ぎながら、皆様にとって益々有意義な意見交換の場として今まで以上に存在意義のある私化連となっていくことを心より祈念致しまして、ご挨拶とさせていただきます。
私立大学化学系教員連絡協議会
会長 長瀬 裕(元東海大学教授)
私立大学化学系教員連絡協議会が生まれるまで
名誉顧問 吉弘 芳郎
昭和30年頃から日本では工業生産の伸びとともに経済も伸び、昭和31年の経済企画庁の経済白書で「もはや戦後でない」と記載されるようになった。この経済発展を支える多くの技術者、研究者の育成が急がれた。しかし当時は、理工系学部のある私立大学は少なく、技術者、研究者の育成は国立大学の理学部や工学部に依存していた。しかしこれらの学部の学生定員を急に増やすのが困難な状態であった。
私立大学の多くは文科系学部で構成されていたが、これに工学部や理工学部が創設され、技術者の育成が行われた。文科系大学から創設された工学部や理工学部では、教育や研究の進め方が文科系学部になかなか理解されず、創設された理工系の教員が苦労することもあった。理工系学部の学生の教育は優れた指導者の下で、実験や実習が必要で、これについての費用が必要となる。しかし国からの私学に対しての財政的支援は少なく、これらを学生の授業料に頼ることになった。それぞれの私立大学が可能な限りの入学者を入学させることになり、これが教育、研究の面で私立大学に共通する問題の種となった。実験、実習など学生が体で体得する科目が基礎となる化学系の学科では、深刻な問題であった。大学の財政事情が根本の原因であるので、いくつかの学部を有する私立大学で理工系学部の一学科では解決の方法もない。
大学では教員組織が大学設置基準で、教員組織、教員の資格が厳しく守られている。私立大学の教員の教育、研究の負担は国立大学に比べて大きく、これが助手たちのいろいろな不満のもととなった。この不満は、学科単位では対応しきれない状態となった。都下の私立大学の化学系ではこれらの問題にどのように、対応しているかを話し合うことが望まれた。
昭和36年(1961年)(故)永井祥一郎先生の呼びかけで、都下の私立大学の理工系化学科の教員が集まり、研究所を見学して私立大学の教員が交流することがあった。この経験があるので、中央大学から都下の私立大学の化学系学科に話し合いの呼びかけが行われた。この呼びかけで日本大学理工学部工業化学科、東京理科大学理学部化学科、成蹊大学工学部工業化学科、明治大学工学部工業化学科と呼びかけの中央大学理工学部工業化学科の5学科であらかじめ各大学での実情を本音で話し合った。本音での話し合いが重要であることとなった。そして都下の私立大学の教員それぞれが、この話し合いで各大学の現場の様子を本音で話し合った。そのため議事録を残さないことにした。そして私立大学化学系の教員の連絡協議を組織化することが、望まれた。呼びかけの中央大学、日本大学、成蹊大学、明治大学、東京理科大学が幹事校となり、幹事校の互選で当番校を決めた。当番校が化学系の大学に連絡その他の仕事を行うこと、幹事校や当番校は、各大学持ち回りをするなど、会の運営方法などの骨子を決めた。
初代の会長に(故)永井芳男先生にお願いすることにした。昭和51年(1976年)会の名称、会員資格、事業、運営、会計、規約の原案が固められた。昭和52年の総会で私立大学化学系教員連絡協議会規約が承認され、昭和52年10月1日よりこれが実施された。その後若干の修正が行われたが現在までこの協議会は継続している。
役員の逝去について
香川 詔志 前会長 2017年6月11日逝去
本間 隆夫 元会長 2018年3月15日逝去
日高 久夫 副会長 2018年6月16日逝去
倉田 武夫 会長 2021年6月29日逝去
高橋 圭子 副会長 2021年12月11日逝去
追悼 香川 詔士 先生(私化連顧問 西海 英雄)
2017年6月14日通夜が横浜市港南区サバスホールで行われました.15日告別式.先生の思いは,著書「小児麻痺に右足が支えた七十年」文芸社(2013)に記されている.それによると,先生は1942年香川県三豊郡財田村に生を受け,社会人として39年の長きにわたり関東学院大学の教員として勤められ,75才の生涯を終えられました.私化連の創立から関係され,それ以降の歴史を書き留められた「私化連40周年記念誌 1974-2014]ではたくさんの章を執筆されました.